山岳医療パトロールの概要

1. 山岳医療パトロールの発足とこれまでの活動

山岳医療パトロール活動は、日本登山医学会認定山岳医・看護師資格を取得した医師・看護師等が、その技能をもって我が国の登山界の発展に寄与することを目的として、「登山医学会公認 甲斐駒ヶ岳山岳医療パトロール」の名称で2017年に甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根で始まりました。甲斐駒ヶ岳が位置する南アルプス北部エリアは、登山愛好家が多く訪れる国内屈指の人気エリアであるにもかかわらず、山岳診療所はわずか1個所のみであり、山岳診療所が各所に点在する北アルプスと比較すると、登山者に必要な医療を提供できる範囲はごくわずかであるのが現状です。このような状況に対し、我々認定山岳医・看護師ができることは何かと考えた結果出た1つの答えは、自らの足で山を歩き山岳医療を届ける、いわば「動く山岳診療所」というアイデアでした。国内で他に例を見ないこの活動には、構想の段階から多くの課題がありましたが、日本登山医学会の後援の元、北杜市および山岳ガイドである花谷泰広氏の協力を得て、また多くの活動参加者と登山者にご理解いただき、今期で5年目を迎えようとしています。
毎年7月から10月の夏山登山シーズンに、七丈小屋を拠点として、駒ヶ岳神社から甲斐駒ヶ岳山頂を経て駒津峰に至るまでの登山道を歩き、登山者への声かけや血中酸素飽和度測定により、高山病や脱水症など登山特有の病気の予防に努めてきました。また、登山者へのアンケート調査を行い、当山岳地域における潜在的な疾病リスクの解明にも注力してきました。足首の骨折、低体温症、虫刺症など、活動中に偶然遭遇した傷病者に対処する場面もありました。
昨シーズンは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が、国内の登山活動のあり方にも大きな影響を与えたことを受け、活動内容を感染予防対策に急遽変更し、登山者および営業スタッフが安全に過ごせるよう、七丈小屋における感染対策マニュアルを作成しました。また、登山口で感染対策に関する登山者の意識調査を行い、問題点の解析も行っています。

2. 当組織および活動メンバーについて

日本登山医学会内の認定山岳看護師運用小委員会(旧)の委員が中心となって立ち上げた、甲斐駒ヶ岳 山岳医療パトロール(代表:師田信人、委員長:稲田真)が活動の運営を行ってきました。実際のパトロール活動は、登山医学会員内から参加者を募り、認定山岳医・看護師1名以上を含む2〜4名体制で各週末ごとに行い、年度ごとに活動実績をまとめた報告書を作成しております。認定山岳医・看護師資格は、国際山岳連盟(UIAA:Union Internationale des Associations d'Alpinisme)が主催するDiMM(Diploma in Mountain Medicine)に準じています。座学・実技を合わせた120時間のプログラムを受講し、クライミングや懸垂下降技術、厳冬期の八ヶ岳等での雪崩埋没者捜索や救急措置等の実地検定に合格することが求められる資格です。

3. 新体制について

本来、日本登山医学会は、ヒマラヤ等の高所登山における生理学などの基礎医学に関する研究活動を中心に行う団体であり、登山現場での医療活動を目的とした組織ではありませんが、国内で最も登山医学に精通した組織として、山岳医療パトロール活動を発足段階から支えていただきました。日本登山医学会内で山岳医療パトロールの実績が認められ、学会の組織改編に合わせて今年度より独立した組織として活動を行うこととなりました。それに伴い、これまでの「登山医学会公認 甲斐駒ヶ岳山岳医療パトロール(旧)」を解体し、運営委員を引き継いで「山岳医療パトロール実行委員会」として新たに組織を立ち上げました。これまでの活動のノウハウを生かし、一層幅広いニーズに柔軟に対応できる活動を行える組織へと発展させて行くことを心掛けています。

4. 今後の活動予定および展望

今年度は、昨年に引き続き黒戸尾根および尾白渓谷遊歩道を中心に、感染対策、啓蒙活動に努めるとともに、北杜市の管轄する八ヶ岳や瑞牆山といった人気エリアへの活動拡大を視野に入れ、準備を進める予定です。

山岳医療パトロール実行委員会 
代表 稲田 真 
副代表 力武 創 
連絡先:info@montmedpatrol.jp 

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